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長野地方裁判所飯田支部 事件番号不詳 判決

主文

被告人鎮西喜久雄、同堀本孝智を各懲役一年に、被告人沢柳静雄を懲役十月に、被告人関島彦四郎、同今村周蔵を各懲役八月に、被告人池田文之助、同小嶋弁雄を各懲役六月に夫々処する。

但し被告人堀本孝智、同沢柳静雄に対し五年間被告人関島彦四郎、同今村周蔵、同池田文之助、同小嶋弁雄に対し四年間右各刑の執行を猶予する。

被告人池田文之助に対し、押収に係る現金六千百六十二円、(昭和二十七年証第六十三号の一)現金六千円(同号の二)を没収する。

被告人池田文之助より金七千八百三十八円を、被告人今村周蔵、同小嶋弁雄より各金二万円を夫々追徴する。

訴訟費用中併合前の被告人鎮西喜久雄等に対する公職選挙法違反被告事件における証人今村嘉市、同岩下竹松(いずれも二回共)に支給した分は、被告人鎮西喜久雄、同堀本孝智の連帯負担とし、同証人大倉三郎、同大槻一雄、同原景左光に支給した分は被告人鎮西喜久雄の負担とし、併合前の被告人池田文之助等に対する同事件における証人小林益美、同田中大八に支給した分は被告人池田文之助の負担とし、同証人今村嘉市、同岩下竹松に支給した分は被告人池田文之助、同今村周蔵、同小嶋弁雄の連帯負担とする。

理由

被告人等はいずれも昭和二十七年十月一日施行の衆議院議員選挙に際し、長野県第三区より立候補した中島巖の選挙運動者であるが、

第一、被告人鎭西喜久雄、同堀本孝智は共謀の上、右候補者に当選を得しめる目的を以つて同年九月一日頃飯田市追手町一丁目十九番地料理店舞鶴事田中みか方において、被告人堀本孝智が被告人今村周蔵、同池田文之助及び同候補者の選挙運動者である伊原春男の三名に対し、同候補者の投票及び投票取纒等の選挙運動の費用報酬として各金一万円を供与すると共に被告人今村周蔵に対し同県下伊那郡千代村及び三穂村における同候補者の選挙運動者である被告人小嶋弁雄及び井上清の両名に同候補者の為投票及び投票取纒等の選挙運動の費用報酬として供与すべき各金一万円を交付し、右伊原春男に対し同県同郡龍江村における同候補者の選挙運動者である高橋健治郎に同候補者の為投票及び投票取纒等の選挙運動の費用報酬として供与すべき金一万円を交付し、被告人池田文之助に対し同県同郡上久堅村における同選挙運動者である久保田正人に同候補者の為投票及び投票取纒等の選挙運動の費用報酬として供与すべき金一万円を交付し、

第二、被告人鎭西喜久雄、同堀本孝智、同関島彦四郎は共謀の上、同候補者に当選を得しめる目的を以つて、同年九月十日頃被告人鎭西喜久雄肩書居宅において、被告人関島彦四郎が被告人今村周蔵、同池田文之助、同小嶋弁雄及び前記伊原春男、久保田正人の五名に対し、同候補者の為投票及び投票取纒等の選挙運動の費用報酬として各金一万円を供与し、

第三、被告人鎮西喜久雄は同候補者に当選を得しめる目的を以つて、

(一)  同年九月十一日頃同市本町二丁目十二番地の同候補者選挙事務所において、同選挙運動者である熊谷一郎に対し、投票及び投票取纒等の選挙運動の費用報酬として金一万円を供与し、

(二)  同年同月二十四、五日頃右同所において、前記井上清に対し前同趣旨の下に金一万円を供与し、

第四、被告人鎮西喜久雄、同沢柳静雄は共謀の上、同候補者に当選を得しめる目的を以つて、同年同月二十三、四日頃被告人鎮西喜久雄肩書居宅において、被告人沢柳静雄が同選挙運動者である市村保人に対し、選挙運動者下田美明外数名に同候補者の為投票及び投票取纒等の選挙運動の費用報酬として供与すべき金九万五千円を交付し、

第五、(被告人沢柳静雄に関する事項 省略)

第六、被告人関島彦四郎は同候補者に当選を得しめる目的を以つて同年同月十二、三日頃同県同郡龍江村字下太田七千百二十二番地木下真平方において、同選挙運動者である同人に対し、同候補者の為投票及び投票取纒等の選挙運動の費用報酬として金一万円を供与し、

第七、被告人今村周蔵は、

(一)  同年同月一日頃前記舞鶴こと田中みか方において、被告人堀本孝智より第一、記載の趣旨の下に供与せられることを知り乍ら金一万円の供与を受け、

(二)  同年同月十日頃前記被告人鎮西喜久雄方において被告人関島彦四郎より第二、記載の趣旨の下に供与せられることを知り乍ら金一万円の供与を受け、

(三)  同年同月五日頃同市追手町一丁目二番地料理業八つ橋こと高坂菊江方において、同候補者に当選を得しめる目的を以つて同選挙運動者である被告人小嶋弁雄に対し、同候補者の為投票及び投票取纒等の選挙運動の費用報酬として金一万円を供与し、

(四)  同年同月二十二日頃同県同郡川路村第四区二千五百六十一番地安藤長造方において、前記目的を以つて選挙運動者である井上清に対し前同趣旨の下に金一万円を供与し、

第八、被告人池田文之助は、

(一)  同年同月一日頃前記舞鶴こと田中みか方において被告人堀本孝智より第一、記載の趣旨の下に供与せられることを知り乍ら、金一万円(昭和二十七年証第六十三号の一はその一部)の供与を受け、

(二)  同年同月十日頃前記被告人鎮西喜久雄方において被告人関島彦四郎より第二、記載の趣旨の下に供与せられることを知り乍ら金一万円(同号の二はその一部)の供与を受け、

(三)  同年同月六日頃同県同郡下久堅村同村役場において同候補者に当選を得しめる目的を以つて同選挙運動者である久保田正人に対し同候補者の為投票及び投票取纒等の選挙運動の費用報酬として金一万円を供与し、

第九、被告人小嶋弁雄は、

(一)  同年同月五日頃前記八つ橋こと高坂菊江方において、被告人今村周蔵より第七、(三)記載の趣旨の下に供与せられることを知り乍ら、金一万円の供与を受け、

(二)  同年同月十日頃前記被告人鎮西喜久雄方において被告人関島彦四郎より第二、記載の趣旨の下に供与せられることを知り乍ら金一万円の供与を受け、

たものである。

(証拠省略)

法律によると、被告人小嶋弁雄を除く爾余の被告人等の金銭供与の行為は各公職選挙法第二百二十一条第一項第一号に該当し、判示第一、第二、の共謀の点については各刑法第六十条を適用し、被告人鎮西喜久雄、同堀本孝智、同沢柳静雄の金銭交付の行為は各公職選挙法第二百二十一条第一項第五号に該当し、共謀の点については各刑法第六十条を適用し、被告人今村周蔵、同池田文之助、同小嶋弁雄の金銭収受の行為は各公職選挙法第二百二十一条第一項第四号に該当し、而して、判示第一、の金銭供与同交付及び同第二、の金銭供与はいずれも一個の行為で数個の罪名に触れる行為であるから、刑法第五十四条第一項前段第十条により各金銭供与の一罪となし、以上被告人等の行為は同法第四十五条前段の併合罪であるから、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、同法第四十七条第十条により被告人鎮西喜久雄同堀本孝智については犯情の重い判示第一、の被告人今村周蔵に対する金銭供与罪の刑に、被告人関島彦四郎については同判示第二、の被告人今村周蔵に対する金銭供与罪の刑に、被告人沢柳静雄については同判示第四、の罪の刑に、被告人今村周蔵については同判示第七、(一)の罪の刑に、被告人池田文之助については同判示第八、(一)の罪の刑に、被告人小嶋弁雄については同判示第九、(一)の罪の刑に夫々併合加重をなした刑期範囲内において被告人等を主文の刑に処する。なお、諸般の情状に鑑み被告人堀本孝智、同沢柳静雄、同関島彦四郎、同今村周蔵、同池田文之助、同小嶋弁雄に対し同法二十五条を適用し主文の如く右各刑の執行を猶予する。

押収に係る主文掲記の各現金は被告人池田文之助が判示第八、(一)(二)記載の収受した利益の一部であるから公職選挙法第二百二十四条によりいずれも同被告人に対しこれを没収し、右金額を判示第八、(一)(二)の金員より控除した金七千八百三十八円の利益は没収することが出来ないから右法条により右金員を同被告人より追徴する。被告人今村周蔵が判示第七、(一)(二)記載の収受した利益金二万円及び被告人小嶋弁雄が第九、(一)(二)記載の収受した利益金二万円はいずれも没収することが出来ないから右法条により同被告人等より主文の如く追徴する。

訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項、第百八十二条を適用し被告人鎮西喜久雄、同堀本孝智、同池田文之助、同今村周蔵、同小嶋弁雄に対し主文の如く夫々その負担を命ずる。

なお、被告人今村周蔵に対する昭和二十七年十一月十一日附追起訴状公訴事実第一記載の同被告人が被告人堀本孝智より合計金二万円の交付を受けた点(同起訴状引用)は本件の起訴及び審理の下においては判示第七、(三)(四)の認定事実に吸収せられるものであり、被告人池田文之助に対する右同日附追起訴状公訴事実第一記載の同被告人が被告人堀本孝智より金一万円の交付を受けた点(同起訴状引用)も、その起訴及び審理の下においては判示第八、(三)の認定事実に吸収せられるものであるからいずれもこの部分について特に判示しない。

弁護人は「判示第一、の被告人鎮西喜久雄、同堀本孝智が共謀して被告人今村周蔵、同池田文之助等に対し金銭を交付した点は、被告人今村周蔵に対する判示第七、(三)(四)の被告人池田文之助に対する第八、(三)の各供与の一段階であつて該供与の共同正犯或は従犯を以つて論ぜられるべきものであり、供与につて公訴がない以上交付の金銭授受の点は何等犯罪を構成しないものであるから無罪である。又判示第四の被告人鎮西喜久雄、同沢柳静雄が共謀して市村保人に対し金銭を交付した点も同様な関係である」趣旨を主張する。しかし乍ら、その主張の供与の点については被告人鎮西喜久雄、同堀本孝智に対し何等公訴がなく、又起訴された交付と弁護人主張の供与との間に事実の同一性を認められない以上、同被告人等に対する関係においてその供与の点まで審理判断することができない筋合のものであるから、本件起訴及び審理の下においてはその交付を以つて供与の一段階或は共同正犯等とみなして犯罪を構成しないものとは言えないのみならず、交付が主張の供与に吸収される関係も認めることはできないものである。従つて本件交付の罪について同被告人等は判示の如くその罪責を負わねばならない。故に弁護人の主張は全部採用しない。

よつて、主文のとおり判決する。(昭和二八年六月二五日長野地方裁判所飯田支部)

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